今回インタビューに答えていただいたのは、軽度の発達障害を持つ夫との関係からカサンドラ症候群になり離婚した、離婚当時42歳の女性です。
当サイトでは、離婚経験者の方にアンケート形式で離婚の体験についてお答えいただいています。
似たような境遇にあるという方は、ぜひ参考にしてみてください。
- 結婚生活7年の末に離婚
- 年齢:42歳
- 職業:専業主婦
- 相手の年齢:36歳
- 相手の職業:会社員
- 子供:いない
結婚願望はなかったが、彼からの猛プッシュで付き合い結婚した
–元旦那様との出会いと結婚に至った経緯を教えてください
元夫とは同じ趣味を持っていて、あるワークショップで出会いました。
最初は彼に興味がありませんでしたが、一目惚れをしたという彼の猛プッシュで会うようになり、ふだんの穏やかな人柄と仕事熱心なところに惹かれて付き合い始めました。私は結婚願望のないタイプでしたが、彼の誠実なところや堅実なところを見て、次第に結婚してもいいと思うようになりました。
昔、「3高」という言葉がありましたが、確かに彼は高身長・高学歴・高収入でした。その安定感に加え、優しい性格が決め手でした。
軽度の発達障害を持つ夫との関係性から「カサンドラ症候群」になり離婚を決意
–なぜ、離婚することになったのか、原因を教えてください
まず彼が誠実な人なので、暴力や浮気、借金といった問題は皆無でした。何もないときは穏やかで楽しい結婚生活でした。
ところが、ときどき「同じことを何度言えばいいんだろう?」と思うことが出てきました。何度同じことを注意しても直らないのです。空気を読めないのかもしれない、悪気はないのかもしれないと思いつつも、「どうして相手の立場に立って考えられないの?」などと責める口調になることも増え、自分で自分がいやになることもしばしば。彼は毎回「ごめん」と言うのに直りません。何だか言葉の通じない相手といるようでもどかしくなることが多くなりました。
その頃、彼はもしかしたら発達障害ではないかと疑い始めました。しかしデリケートな問題すぎて、言い出すことができません。すると彼が「会社で発達障害の可能性があると思うから病院に行ってきたらどうかと言われた」と言うのです。彼は性格も穏やかだし勉強もできるうえ、それなりに社会性もあります。そのため35になるまで気付かれなかったのでしょう。しかし診断の結果は「軽度の発達障害」ということでした。
彼もショックを受けていましたが、その頃には私は疲れ果てていました。いわゆる「カサンドラ症候群」です。周りの人たちの「あんなに優しそうな旦那さんなのに不満があるのは、あんたが間違っているんだ」という態度に追い込まれていました。自分は夫を理解しようとこんなに頑張ってきたのに、どうして夫は私を分かろうとしてくれないのだろうと思うと、二人でいても孤独で仕方なかったです。
また、私は独身時代はバリバリ働く仕事大好き人間でしたが、夫が転勤族のためほぼ専業主婦になっていました。そのことで家にこもりきり、誰も理解者がいないような苦しい心境になっていました。生活には何の不満もありませんでしたが、メンタルの健全さのために離婚しなくてはと思いました。
–離婚を告げた時、元旦那様はどのような反応をしましたか?
「カサンドラ」になってつらいことを打ち明けたとき、彼はショックだったようです。しかし彼は自分の何がいけないのかさっぱり分からないようでした。
自分は善良で優しい人間だと思っているからです。確かにそうなのだけど、言葉が通じない、分かってもらえない、いつも自分ばかり分かろうとするのに悪者扱いされる、そういうのに疲れて限界だ、と訴えました。
そして離婚という言葉を出したとき、最初は鼻で笑われました。彼は離婚するつもりは全くないと断言していました。
すべてをぶつけて、しぶしぶ離婚に同意してもらえた
–離婚の協議はすぐにまとまりましたか? それとも、時間がかかり大変なものでしたか?
彼には離婚の意志が皆無だったので、長丁場になると思いました。しかし話し合いの中で夫に「だいたい専業主婦だったのに生活できるの?」と言われたときは、夫の希望や事情で仕方なく専業主婦をやってきたのに、なぜ馬鹿にされなければいけないのかと怒りがこみ上げ、初めて私がブチ切れました。
そこでそれまでのストレスや理不尽に思っていることをすべて話し、根気強く訴えて、最終的にはしぶしぶ同意してくれました。最初に離婚を切り出してから3ヵ月くらいでした。慰謝料はありませんが、財産の一部は頂きました。
離婚していなかったら鬱になっていたので後悔はない
–離婚してよかったことを教えてください
離婚してよかったのは、精神的に追い詰められなくなったことです。自分の忍耐が足りないのか、自分の心が狭いのかと悩み自己嫌悪に陥ることもなくなりました。
また、数年ぶりに働くようになり、やっぱり仕事は楽しいな、充実感があるなと思えるのが何よりよかったです。
主婦時代は、夫の役には立っていても、社会には貢献していません。1~2年で転勤だったので、人間関係も希薄でした。しかし、離婚して自立し、特技を生かして働くと、社会に貢献しているという充足感が得られ、同僚にも恵まれ、自己肯定感が大いに上がりました。
–離婚して辛いと感じたことを教えてください
今でもときどき、ふいに「自分は夫を裏切ったのだろうか?見捨てたのだろうか?」という問いがわいてきて、苦しくなります。また何でもないことで笑ったり、一緒に将棋をさしたり、結婚生活の楽しかったことを思い出すと、泣きそうになることもあります。
それはひとえに、夫への感謝の気持ちを伝え切れなかったと感じているからです。離婚間際は自分が必死すぎて、心の余裕がなく、あまり優しくできませんでした。そのことへの後悔が本当に辛いです。
–離婚して正解だと感じますか? それとも後悔の方が大きいですか?
離婚しなかったらもっと生活は安定して金銭的にラクだったと思いますが、その点においては全く後悔していません。自立していることにとても満足しているからです。社会とのつながりって大事だなあと身に染みています。働くことが好きなので、自分には独身が向いているのかもしれません。
たまに夫の優しかったことや笑顔を思いだすと、胸が苦しくなりますが、それは離婚への後悔ではなく、「どうしてこうなってしまったんだろう」というやるせない気持ちです。
でも離婚していなかったら鬱になっていた可能性が高いので、離婚してよかったと思います。
再婚するとしたら自分と似た人が良い
–現在は再婚していますか?
私も元夫もまだ再婚していません。今は仕事に夢中で、あまり再婚願望はない状況です。充実しているので、特に彼氏や夫が欲しいとも思いません。
しばらく一人で気ままに暮らしたいと思っていますが、そのうち良い出会いがあれば、再婚してもいいかなあとは思います。元夫は自分とはかけ離れたタイプの人間だったので、再婚するときは「人種が近い」と感じられるような人がいいです。
ちなみに元夫には幸せになってほしいと心の底から思っています。
自立できるか不安な人も何だって仕事にできるから大丈夫
–離婚経験者として、現在、離婚を悩んでいる人に向けてアドバイスをお願いします
結婚生活が本当にストレスなら、早く離婚してやり直したほうがいいです。行動ありきです!経験者として、もちろん大変なのは分かります。でも何事もダラダラ長引けば長引くほど切り替えるのが難しくなり、再スタートも遅くなります。
子どもがいないカップルは特に、もめる事柄も少ないので、スパッと離婚するのが心身のためです。仮に子どもがいても、「子どものために別れない」などというのは親のエゴで、子どもは早く別れてほしいと思っています(私の両親は離婚するのに長年もめ、それを見ているのが本当に嫌だった)。
私のように専業主婦だった方は、自立できるのか不安もあるでしょう。でも大丈夫です!人には何か必ず特技があります。エクセルやパワポが何だか分からないなら、得意の家事を仕事にすることだってできるのです。私の友人は売れっ子家政婦でけっこう稼いでいます。新しい生活をよくイメージして、力強く一歩を踏みだしてください。
調査方法:アンケートサイトにて質問
調査日:2021年6月4日